写真・文/岩佐十良(本誌)
※参考文献:歴史「古道」を歩く 井口一幸著 彩流社
手元に一冊の本がある。それによれば、雨飾温泉(別名・梶山新湯)の近くに、梶山元湯という温泉があるという。梶山の“梶”は鍛冶屋の“鍛冶”で、このあたりは昔鉱山だったとある。元湯が宝暦5年(1755)、新湯が文政6年(1823)開湯というから、かなり歴史のある温泉だ。
たしかに国土地理院発行1:25000の地図にも、標高1487mの駒ヶ岳の南西側、根知川の支流に温泉マークがぽつりとある。さっそく山支度を整え、雨飾温泉へと出発した。
夕食のあと、支配人の伊藤博夫さんに話を聞いた。
「実はね、一昨年、テレビのロケが入ってね。村の衆が道を開いたんだよ。だから誰でも行ける。1時間半ってところだな」
もっとハードな道のりをイメージしていたから、ちょっと肩すかしを食らった感じだが、それならそれでいい。楽に行けるのは大歓迎だ。
翌朝8時30分、宿を出発。梶山集落の跡地付近に車を止め、左右に広がる棚田跡を進む。
目印は上流の沢から棚田に引いていた用水の黒いホース。だんだんと草が生い茂ってくるが、ホースが要所に見えるので迷うことはない。しかし、“楽勝”なのは最初だけだった。
自然の力は凄まじい。人の通らない道など、1年もすれば元の自然に戻ってしまう。
最初の崩落箇所で道を見失い、森を彷徨うこと1時間。やっとホースを発見したものの、雨足が強くなり川まで進んで断念。手元のハンディGPSに登録した梶山元湯は、すぐ川の上流を指していたのだが……。
宿に戻り伊藤さんにそのことを話すと、笑いながら
「そうかぁ。もう少しだったのになぁ。残念。じゃあ、もう1泊だな。ははは」
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