山も含めて7万坪もの敷地には、大正末期に建てられた風情ある木造の本館と離れ、滞在型の別館『山水荘』が点在している。与謝野晶子も泊まったという本館は、梁も柱もすべて曲がっていて正直いってかなり古い。当然鍵もなく、トイレも部屋の外だ。
しかし、これぞ歴史を重ねた建物ならではの風情。2階建ての大きな建物にも関わらず、客のプライバシーに配慮し、宿泊できるのは1日2組のみ。2間を独占できるだけでなく、食事は別の間でいただけるという贅沢さなのだ。
そのほか、源泉かけ流しの内湯と坪庭が付いた風雅な離れ、平成11年に建てられたばかりの滞在型別館など、訪れる相手によって客室タイプを選べるのがうれしい。
各風呂も趣向が凝らされている。山から降りてくる風に吹かれてのんびりしたいなら露天風呂へ。キズ湯と温度が高めの湯船を行ったり来たりしたいなら別館へ。本館にある内湯は小さめで、ほっこりできる。そしてふたりで入るなら新設されたばかりの貸切露天『藤の湯』がおすすめだ。
緑がかった白濁湯は肌に優しく、ほんのり香る鉄分の香りが妙に心地よい。長い年月に渡り人々の傷を癒してきたにごり湯に浸かれば、日頃の疲れもスーッと癒されるはずだ。
自遊人2004年10月号別冊『温泉図鑑・秋』より転載。
|