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多くの著名人に愛された『大丸風呂』は赤松をくりぬき、桶のように組み合わせたもので、湯をかけ流せるように少し手前に傾いている。縁には銅が被せられており、周囲の木の浴槽や床と馴染んで風情たっぷり。毎日湯を抜いて掃除しないと、すぐに銅が変色するためこの風合いは保てない。
窓の外は石垣が塞いでいて残念ながら景色は全く見えない。ところが、大貫さんは「湯船に入った人にしか見えないものがあるんですよ」と秘密めかす。
風呂桶にしゃがんだ低い位置から外を仰ぎ見ると、ちょうど石垣は視界から消え、その上に向こうの山がぽっかりと浮かんで見えるのだ。ここに来た人にだけ見ることが許された、特別な世界というわけだ。
もうひとつの内湯『岩風呂』も面白い。まずゴツゴツとした岩の壁がいろんな表情に見える。外は見えないが、これだけで時間を忘れてしまいそうだ。そして、浴槽に入れば場所によって温度が違う。
源泉温度が63度と高いので、『大丸風呂』と同じく加水してあるのだが、浴槽中の一方からは源泉が、もう一方からは天然水が出て混ざり、適温になる仕組み。だから熱い所と冷たい所、好みの場所を探して入ることになる。
ちなみに、温泉のみの立ち寄り入浴は行ってないので、風呂をゆっくり楽しめるのも良い。
※自遊人2006年12月号別冊『温泉図鑑』より転載
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