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外湯巡りで知られる渋(しぶ)温泉の中で、ひと際目を引くのが木造4階建ての『歴史の宿 金具屋(かなぐや)』。正面の『斉月楼』と『大広間』の2棟が国の有形登録文化財に指定されている。これは6代目の当主が資財を投げ打って完成させたもので、昭和8年着工、11年完成。掛かったお金も時間も手間も半端ではない。
9代目ご主人の西山さんに「費用はいかほど?」と聞くと、笑いながらも「『斉月楼』と『大広間』『鎌倉風呂』を合わせて、当時の価格で10万円と聞いています」と答えてくれた。ちなみに、その頃、お値段の高い宿は1泊3円。今が大体3万円だとすると……現在の価格で10億円という計算になる。
ともかく、6代目は非常に粋で目の効く人だったのだろう。
「人の意見を聞かない偏屈者だったそうです。でも、大変お洒落で、戦前なのに白いスーツに蝶ネクタイ、丸メガネにちょび髭といういでたちでした。近くの郵便局長も兼ねていたのですが、その格好で馬にまたがり出勤していたとか」
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