わざわざ足を運びたい、すべてにこだわる美食宿

石山離宮 五足のくつ 【熊本・下田温泉】

旅館でもなく、ホテルでもない。海に面した静かな宿で、表現されているのは“天草らしさ”。時間をかけてでも訪れたい、熊本・天草にある『石山離宮 五足のくつ』。料理だけでなく、建物、雰囲気、全てにこだわり抜いた人気宿をご紹介します。


この宿に泊まる事が旅の目的

「今お客様が求めているのはオーナーの個性が強く出ている宿だと思うんです。もちろん、合わない方もいらっしゃいますが、ここで過ごした方全員に70点という合格点をもらうより、20%の方に100点をもらうことを目指したい。それが実現すれば、必ず満室になります」

熊本は天草、東シナ海を見下ろす小高い土地。はっきりいってかなり辺鄙な場所だが、『石山離宮 五足のくつ』に訪れる人は観光目的でなく、宿での滞在が目的。毎月1日の朝8時半から半年後の予約を受け付けていても、土曜の宿泊はすぐにいっぱいに、金曜と日曜も3〜4ヶ月以内には埋まってしまうのだそう。

こだわり抜いて表現したのは
天草の魅力が詰まった宿

オーナーの山崎博文さんは、下田温泉にある老舗旅館の4代目。30カ国以上を旅し、自然の中にある宿を理想に掲げている。

その理想を実現するべく、約8,300坪の土地を購入したのが、平成4年。そして9年後の平成13年、大工、左官、庭師ら多くの職人を携えての宿作りが始まった。

 山崎さんが掲げたコンセプトは“天草らしさ”。歴史や文化、風土や宗教など、天草のあらゆるものを表現しようと試みた。平成14年に「ヴィッラズA」と「ヴィッラズB」をオープンし、その後、平成17年にはヴィッラズCをオープンした。

 「ヴィッラズA」の離れ6棟は“天草の過去”を表現するために、建物には天草の伝統的な建築や手法を用いている。ヴィッラズBには4棟あり、“天草の未来”をイメージ。天草陶石の採掘場跡に、アジアのリゾートを演出。

さらに、ヴィッラズA・Bとは異なる独立したゾーンにある「ヴィッラズC」は“キリスト教が伝来した中世の天草”をテーマに、仏教的な外観に、カトリック的デザインなど、東洋と西洋の融合を表現している。

豊富な海の幸が
満載の夕食

 ヴィッラズAとBには『淡味 邪宗門』、ヴィッラズCには『天正』、とそれぞれ食事処があり、『天正』は、オープンカフェやバー、ライブラリーなども兼ね備えている。

 夕食は、連泊客以外には肉を使わず、近海の魚介類と野菜がメインの献立。天草で捕れるものにこだわり、魚は定置網漁や一本釣りが中心。その日に揚がったものを仕入れるので、新鮮そのもの。また、うま味調味料はいっさい使わず、味噌や醤油も無添加のものを使用するこだわり様。18時〜22時までの間なら、好きな時間を指定できる。

「旅の目的が宿になりつつある」と言う山崎さんの言葉どおり、交通の不便さは関係ないどころか、むしろ付加価値をつけている。旅館でもホテルでもない、日本でもない外国でもない。この不思議な空間が自分の感性に合えば、リピーターとして、いく度となく訪れることになるだろう。

石山離宮 五足のくつ【熊本・下田温泉】
所在地:熊本県天草市天草町下田北2237
TEL:0969-45-3633
宿泊料金:1泊2食ヴィッラズA・B 26,400円〜、ヴィッラズC 46,350円〜
チェックイン:15:00
チェックアウト:ヴィッラズA/B 11:00 、ヴィッラズC 12:00
電車でのアクセス:JR三角線三角駅から車で約1時間30分
車でのアクセス:九州自動車道松橋ICから約2時間 / 天草空港からタクシーで約40分
予約:要予約
地図:Google マップ
HP:五足のくつ
ヴィッラズBの離れ。2階の寝室にはバルコニーが設けてある。窓から見える色彩のコントラストが見事。
ヴィッラズA・Bの食事処『淡味 邪宗門』。修道院をイメージしており、異国情緒あふれる空間。
近海の豊富な魚介類中心の夕食だが、飽きさせない献立。