
山根智恵子さんのことを紹介するときに、いつも一番に伝えたくなるのは、彼女のつくる加工品の塩使いの絶妙さです。
料理の技は塩梅にはじまり塩梅に終わるといわれるほど、塩加減が素材の味を引き出す要であることはよく言われることです。そして、山根さんほど、塩使いの妙を伝えてくれる方にはなかなかお目にかかれません。
山根さんのつくるウニの塩漬けを舌にのせたとたん、ウニとは本来こういう味を内に秘めているのだと驚きにうたれます。ウニのおいしさそのものに触れた感覚になるのです。
美味しいものをいただいたとき、どうしておいしいのかその理由を考えたくなります。そもそも素材の鮮度がいいとか、とびきり丁寧に仕上げているとか、味わう過程でいろいろ思いめぐらせます。山根さんのつくる美味しさの理由を探すと、もちろん素材のよさ、つくりの丁寧さがあってのことですが、その次元を飛び越えた何かが見えてきます。美味しさの中に、とても優雅な「塩!」の姿が見えてくるのです。いえ、優雅すぎて、すぐにそれとはわからないほどの、美しい塩味。
「塩の角があったらいやでしょ。」
と山根さんは簡単にいいますが、塩の角がないどころか、むしろ塩の味がしないのです。薄塩だから、減塩だから、塩の味がしないということではありません。塩の気配はむしろしっかり濃厚にあるのです。だって、あれだけ魚の味、いくらの味、ウニの味の輪郭をはっきりと際立たせているのですから、塩が下支えしていないわけがない。
「いろんな塩を使い分けてはいますよ。」
山根さんが、秘技を語り始めました。
「ウニの塩漬けには、宮古の塩が合うのよ。」
「粗塩でしめてから、新たに塩で味付けし直すのもあるし、この鰆なんかは、藻塩がいいしね。魚によっていろいろよ。」
この「いろいろ」というところが秘技ですね。
最近になって、山根さんの名刺にこんな文言が加わりました。
「塩は最高の贈り物 塩を極めて食材に活かす」
山根さんはいよいよますます「食品の王道」を歩いていかれるようです。岩手三陸宮古の海の幸で培ってこられた山根さんの類まれなる塩使いのセンスは、広く世界の人たちに向けても伝えていってほしいと願っています。
冬木 れい
【冬木れい】
"健康志向の家庭食"を研究テーマに、料理研究サロン「大きな竃」を主宰しながら各種のレシピ開発・商品開発などに広く活躍する料理研究家。
10年に渡り地方食材のフィールドワークに取り組み、特に岩手の食材に精通しています。


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