栽培から手打ちまですべて行う珍しいそば屋
かねさま蕎麦の魅力は、なんといっても秋山郷在来種の蕎麦であること。そして、蕎麦の栽培から製粉、手打ちまで、すべて自力で行っているところにあると思います。蕎麦の栽培からお客様の口に入るまで、すべて自分たちでまかなっているそば屋は、なかなかありません。
おそばをつくっているのは、新潟県津南町にある「かねさま蕎麦会」。約30人のそば打ち名人たちによって構成されるNPO法人です。津南町は、新潟県と長野県との県境にある町で、蕎麦のふるさと秋山郷まではすぐ近く。かねさま蕎麦会は、その津南町で秋山郷在来種の蕎麦を栽培しながら、そば屋を経営しています。
といっても、会員の中にはほかの職業を持っている人もいるので、そば打ちは持ち回りで担当。お店は月曜、火曜を定休日にして、その2日間で蕎麦畑の世話を行っています。
そもそもなぜ自分たちで蕎麦屋を始めたのか。その理由は3つあります。一つ目は、言うまでもなく「そば打ち名人」と言われるほどそばが好きだったから。二つ目は食品の偽造・改ざんが社会問題化するなか、自信をもって提供できるのは自らの手でうそ偽りなくつくったものであるとの想いから。三つ目はふるさとに年々増えていく耕作放棄地を前に、自分たちで何かできることをしようと思ったからだそうです。
実は、津南町は日本一ともいわれる豪雪地帯。雪国の中でもとくに雪深い地域で、冬ともなれば4、5メートルの積雪になることも珍しくありません。そのような地域ですから過疎化が進み、農家の高齢化に伴って、耕作放棄地も年々増える一方でした。そこで、地域のそば打ち名人たちが集まり、「耕作放棄地に蕎麦を植えて、安全で美味しい蕎麦をつくろう」とかねさま蕎麦会が結成されたのだそうです。
まずは津南町の小松原地区の耕作放棄地を借り受け、ブルドーザーなどの重機を借りて、荒れていた土地を自力で整備。一言に整備といっても、木を切って根を掘り起こしたり、草を刈り払ったりと、畑になるまでには大変な苦労があったそうです。
そうしてできあがった畑に秋山郷在来種の蕎麦を植えて、栽培から収穫まで自分たちで行っています。もちろん、安全・安心を追求していますから、農薬や化学肥料は使いません。収穫した玄そばは天日干しで乾燥させ、石臼で製粉して手打ちにします。もちろん店のきりもりまで、すべて自分たちで行います。まさしく「From seed to eat」を地でいくおそば屋さんです。
まず塩で食べてみてください
つなぎには布海苔とオヤマボクチを使用しています。布海苔は、この地方ではよくつなぎに使われる素材で、そばに滑らかな喉ごしが出るのが特徴です。オヤマボクチは津南町周辺の山にたくさん生えている山ゴボウの一種で、これを加えるとそばに強いコシと歯ごたえが出ます。けれど一枚の葉からとれる量は、ほんのわずか。そのため、かねさま蕎麦会では、供給を安定させるためにオヤマボクチも自家栽培しています。
そうしてつくられた手打ちそばは、香りと喉ごしの良さが魅力。滑らかで快い喉ごしとともに、秋山郷在来種のすがすがしい香りが鼻に抜けていきます。そばつゆもいけますが、もし家に藻塩があれば、まず塩で食べてみてください。そばの香りと甘みがぐっと引き立ち、そば本来の味がよくわかります。
そばつゆのだしは焙煎した焼津産のそうだかつおとさば、そして煮干しから引いています。つゆは濃すぎず、すっきりと澄んだ味わい。そこにすだちとわさびを添えていただくと、そばのさわやかな香りがいっそう引き立ちます。
販売は、手打ちそばのみと、手打ちそばにつゆが付いたセットとあります。そばは注文が入ってからの製粉・手打ちとなるので、余裕を持って注文していただいたほうが安心です。
ちなみに直営店では、毎朝打ったばかりのそばを食べることができます。お店の場所はJR飯山線津南駅構内。売店の奥の扉にかかった白いのれんが目印です。そばは機械を使わずにすべて手作業で打っているため、一日限定30食。保存料なども使っていないため作り置きできず、打てる量にも限りがありますが、その分鮮度は抜群です。ぜひお店にも食べに行ってみてください。
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